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冬の低体温症にご注意!実は自宅の中で多く発生しています

北海道より香川県の家のほうが寒い? 熱中症にも劣らない、冬の健康リスク

夏になるとマスコミでは熱中症への注意が繰り返し呼びかけられます。一方、冬の「低体温症」については、あまり話題になりません。

昔、「八甲田山」という映画がありましたが、低体温症は雪山で遭難した人や厳しい寒さの中で長時間過ごした人に起こるものだと思われるかもしれません。

ところが、実際には低体温症で救急搬送される人の多くが屋外ではなく屋内で発症しています。

しかも、北海道のような寒い地方より、香川県のような比較的温暖な地方のほうが、冬の住宅内室温が低いという調査結果もあります。

今回は、意外と知られていない家庭内の低体温症について、その危険性と予防方法をご紹介します。

1.低体温症とは?

私たちの体は、通常、体の内部の温度(深部体温)が約37℃前後に保たれるよう調節されています。

しかし、寒さなどによって身体から奪われる熱量が体内で作られる熱量を上回ると、次第に体温が下がっていきます。

深部体温(脇で測る表面温度とは異なります)が35℃以下に低下した状態を「低体温症」と呼びます。

低体温症が進むと、脳や心臓などの働きが低下し、重症の場合には意識障害、不整脈、心停止などを引き起こすことがあります。

深部体温の目安 主な症状
32〜35℃ 強い寒気、震え、動作が鈍くなる
28〜32℃ 意識がぼんやりする、震えが弱くなる、脈が遅くなる
28℃未満 昏睡、重い不整脈、心停止など

※一般的な目安です。症状には個人差があり、体温だけでは重症度を判断できません。また、家庭用体温計で測る脇の下の体温は、深部体温とは異なります。

日本救急医学会も、低体温症では体温低下に伴って意識・呼吸・循環の機能が障害されることを説明しています。

2.低体温症は、実は屋内で多く発生している

日本国内の救急医療施設を対象とした調査では、80歳以上の低体温症患者の屋内発症割合が

86.9%

さらに、80歳以上の患者の院内死亡率が

30.4%

と報告されています。(2011〜2016年に国内12施設を受診した低体温症患者の解析。死亡率は入院・受診した患者集団の値であり、家庭内で低体温症になったすべての人の死亡率ではありません。)

 

日本の救急医療施設12施設で行われた研究では、低体温症患者537人を解析したところ、約8割が65歳以上でした。さらに、80歳以上の患者では86.9%が屋内で発症していました。

つまり、高齢者の低体温症は、決して雪山や屋外だけの問題ではないのです。

3.北海道より香川県の住宅のほうが寒い?

これは、日本の住宅環境を考えるうえで、とても興味深い調査結果です。

全国2,190戸の住宅について冬の室温を調べた研究では、都道府県別の居間の平均室温に大きな差がありました。

北海道では居間の平均室温が19.8℃だったのに対し、香川県では13.1℃。その差は6.7℃にもなりました。

なぜ、このような逆転現象が起こるのでしょうか。

北海道などの寒冷地では、住宅の断熱性能や暖房設備が重視され冬の室内を暖かく保つ生活習慣が根づいています。

一方、比較的温暖な地域では、厳しい寒さへの備えが十分でない住宅もあり、暖房を使用する部屋や時間帯が限られることがあります。

その結果、外気温はそれほど低くなくても、住宅の内部が意外に寒くなってしまうのです。

これは京都府南部に住む私たちにとっても、他人事ではありません。

ただし、香川県のほうが低体温症の発生率や死亡率が高いと、この室温調査だけから結論づけることはできません。 室温の低さは重要な危険要因の一つですが、実際の発症には年齢、健康状態、生活環境なども関係します。

4.室温18℃が健康を守る一つの目安

世界保健機関(WHO)は、寒い季節の住宅について、一般の人々の健康を守るための室温として18℃以上を一つの目安としています。

高齢者や乳幼児、心臓や呼吸器などに持病がある人では、さらに高い室温が必要になる場合もあります。

日本の住宅調査では、居間の平均室温が16.8℃、寝室が12.8℃、脱衣所が13.0℃でした。

つまり、居間も寒いけれども、寝室や脱衣所がもっと寒い住宅も多いということです。

室温18℃という数字が「これを下回ると直ちに低体温症になる」という境界線ではありませんが、寒い室内で過ごすことは、低体温症だけでなく、血圧上昇や循環器・呼吸器への負担とも関連します。

5.なぜ高齢者は低体温症になりやすいのでしょうか?

高齢者には、低体温症を起こしやすい理由がいくつかあります。

・寒さを感じにくくなる: 室温が下がっていても、寒さに気づくのが遅れることがあります。

・体内で熱を作る力が低下する: 筋肉量や活動量が減ると、十分な熱を作りにくくなります。

・体温を調節する機能が衰える: 血管の収縮や震えなどの反応が弱くなることがあります。

・病気や薬の影響を受ける: 低栄養、低血糖、甲状腺機能低下症、感染症、一部の薬剤などが関係することがあります。

・助けを求めにくい: 独居や寝たきりなどの場合、異常の発見が遅れることがあります。

また、低体温症になると意識や判断力が低下するため、自分で暖房をつけたり、暖かい場所へ移動したりできなくなることがあります。

このように、寒さへの対応が遅れ、さらに体温が下がってしまう悪循環に陥ることがあります。

6.屋内で発症する低体温症は、重症になりやすい?

国内の低体温症に関する調査では、屋内で発症した患者は屋外発症の患者より高齢で、重症度も高い傾向が報告されています。

ただし、高齢者の低体温症は寒い室内にいることだけで発生するとは限りません。肺炎などの感染症、低血糖、脱水、栄養不足、その他の病気によって体力が低下し、もともと体温を維持しにくくなっている場合もあります。

したがって、屋内で発症した低体温症が重症になりやすい背景には、発見の遅れに加えて、もともとの病気や体力低下が関係している可能性があります。

7.熱中症と低体温症、どちらが危険?

熱中症と低体温症は、どちらも体温調節の破綻によって生命に危険が及ぶ病態です。

比較項目 熱中症 低体温症
主な季節 夏 冬
主な環境 高温・多湿 寒冷・低室温
屋内での発症 あり あり
高齢者のリスク 高い 高い
重症時の問題 意識障害、臓器障害など 意識障害、不整脈、心停止など
予防の基本 冷房、適切な水分補給 暖房、保温、十分な食事

では、どちらのほうが死亡する危険性が高いのでしょうか。

実は、単純には比較できません。

熱中症の死亡者数は人口動態統計で集計されていますが、低体温症では、寒冷環境によるものに加えて、感染症やその他の病気に伴う体温低下もあります。

また、低体温症の救急受診患者の死亡率と、熱中症の全国死亡者数を直接比較することもできません。

大切なのは、熱中症と同じように、低体温症も家庭内で発生し、命を脅かすことがあるという事実です。

夏の暑さ対策だけでなく、冬の寒さ対策も、健康を守るために欠かせません。

8.家庭でできる低体温症の予防

・室温を確認する

居間だけでなく、寝室や脱衣所にも温度計を置き、常日頃から室温をチェックする習慣をつけましょう。

・寝室や脱衣所も暖かくする

居間だけ暖めても、入浴前後や就寝中に身体が冷えることがあります。各部屋の暖房に留意し、部屋ごとの温度差を小さくすることが大切です。

・食事と体調管理を大切にする

十分な栄養と水分をとり、体力を保つことも重要です。体調不良や食事量の低下があるときは、とくに注意しましょう。

また、離れて暮らす高齢のご家族がいる場合は、冬場の室温や暖房の使用状況について、時々確認してあげるとよいでしょう。

9.低体温症が疑われるときはどうすればよい?

強い震え、動作の鈍さ、反応の悪さ、意識がぼんやりするなどの症状があれば、低体温症の可能性があります。

特に、意識がおかしい、呼びかけへの反応が悪い、呼吸が異常に遅いなどの場合は、直ちに119番通報してください。

救急車を待つ間は、安全で暖かい場所に移し、濡れた衣服があれば可能な範囲で取り除き、毛布などで体を保温します。無理に歩かせたり、体を強くこすったり、急に熱い風呂に入れたりしないでください。

意識がはっきりしていて、むせずに飲み込める場合に限り温かい飲み物を少量飲むことは可能ですが、意識が低下している人には飲ませてはいけません。また、緊急事態では気管内にチューブを入れて呼吸を補助することがありますが、チューブの挿管の際は胃が空っぽのほうが安全性が高いのです。飲み物の摂取で暖めるより外からの保温で対応するほうが安全です。

低体温症が疑われる場合は、家庭で体温を戻そうとして受診を遅らせないことも重要です。

おわりに

低体温症は、雪山などの特殊な環境だけで起こる病気ではありません。

日本では、冬の室内が十分に暖かく保たれていない住宅もあり、とくに高齢者では自宅に居ながら低体温症を発症することがあります。

夏には熱中症を防ぐために冷房を使うように、冬には低体温症や寒さによる健康被害を防ぐため暖房を適切に使うことが大切です。

「家の中だから寒さは大丈夫」と思わず、冬の室温にも目を向けてみてください。

それが、ご自身やご家族の健康を守る第一歩になります。